不完全性というスパイス

不完全性というスパイス

どんなものにも理想形というものはあって、だけれどもなかなか理想形というものを手に入れることは難しい。何度も家を建てなければ、理想とする家にはならないなんて話も聞いたことがある。つまり理想というものは、あらゆる事象が持ち合わせる不完全さがあるからこそ成立するのだとも言えるかもしれない。それはどこか記憶とも似ている。記憶は曖昧だから良いところもある。曖昧だから人はまた人と会いたくなるし、また同じ店のラーメンを食べたくなる。逆説的に言えば、不完全さこそがある種の秩序を守っているんであって、完全さは時にエントロピーの増大を招くものかも知れない。人が完全な記憶を持ち合わせれば、世の中のラーメン屋さんは潰れまくってしまう。

僕にとってのジーンズの理想形はポケットの形状が切り離せない。具体的に言うと前後に二つずつ、合計四つのポケットがほしい。それ以上は逆にいらない。常に入れないとしても、右の前ポケットにはタバコとライター、左の前ポケットには携帯電話、右の後ろポケットには財布、左の後ろポケットには文庫本を入れられるようにしておきたい。これが僕の理想形。例えば携帯が右の前ポケットで、という訳にはいかない。僕の場合。それは信号機の配列と一緒で、僕にとっては大いなる混乱を招く。
ポケットのサイズも大切だ。例えば文庫本が入らないサイズではダメで、ポケットが小さいからここには捕まえたカブトムシを入れておこうだとか、淡き想い出を入れておこう、なんて訳にはいかないのだ。

人生を楽しむ一つのスパイスとして、理想と不完全性の関係を正しく理解することが大切だ。
今日は天気が良くて、けれど用事があったため、朝からバスで通勤。久しぶりに文庫本を左の後ろポケットに突っ込んで家を出た。とても気持ち良く幸せな朝だった。

by ISTP

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