ぐるぐる

ぐるぐる

夏休みに入って、公園で遊ぶ子供たちの姿が増えた。
額に浮かぶ汗を拭きながら、浮かぶ映像は過去の自分。
真夏の空があの日の夕焼け空に塗り替えられる。

夕暮れ時になると友達は「塾に行かなきゃ。」と次々に帰っていく。
夕焼け空。
公園のフェンスに向かって、一人取り残された僕はボールを蹴り続ける。
夕焼け空はやがて深い漆黒に飲み込まれていく。
わずかに照らされる公園の頼りない明かり。
それを頼りにボールを蹴り続ける。
父から誕生日に買ってもらったサッカーボールはボロボロだ。
表面はところどころ剥げ、下地が剥き出しになっている。
どれくらいの時が流れたのだろう。
暗闇は時間の概念を奪う。

夕食が出来たことを告げる母の声が聞こえる。
公園を後にし、団地の階段を一気に駆け上がるとカレーライスの匂いが鼻に届く。
お腹がグルルと鳴る。
「ただいま!」と大きな声で言いながら玄関の扉を開ける。
靴を脱いでから服が汚れていることに気づき、玄関で立ち止まって靴下を脱ぐ。
「お帰りなさい。お風呂沸いているよ。」と母の声。
カレーライスの匂いに耐えながらお風呂へと向かう。

血管の浮き出たゴツゴツとした自分の手を眺める。
歳を重ねるにつれ、過去に手繰り寄せられることが増えた。
あたかも映画のワンシーンのようにフラッシュバックしては、自分という存在の成り立ちに再会する感覚を抱く。
在るべくして在る自分を感じ、様々なことに感謝する。
心の引き出しにはいったいどれだけの保管容量があるのだろう。
ずっと残しておきたいものが増えていって、ずっと忘れたくないことが増えていって。
それが歳を重ねるということならば、それはそんなに悪いことじゃない。
現在の価値は未来が教えてくれるものならば、今この瞬間はいつだって多くの可能性を秘めた大切な時。
現在も昔も未来もぐるぐる回って、全ては一つに収束する。悲しみも喜びも。
今日は野狐禅でも聴こう。

by ISTP

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