カセットがひとつしか入らない(ダブルデッキではない、と言って現代の方にわかるだろうか…)ラジカセを僕は長らく使っていた。赤いシングルカセットのラジカセ。決して裕福な家庭ではなかったので、何かほしいものがあればすぐ買い与えられるような環境じゃなかったから、どうやって手に入れたものかは今となっては思い出せない。当時は音楽配信も当然なく、CDもまだそれほど世に出ていない時代。時代的にはレコードからカセットテープに移行していた時代かな。カセットテープは図書館で借りていたから、僕は結構マセた音楽などを聴いていて。なんたって図書館で貸してるカセットテープなんで。僕は小学四年生から大学生になるくらいまで、その赤いラジカセを大切に大切に使い続けた。壊れるまで。
中学生になるとCDがかなり普及されたけれど、なかなか買うことが出来ず、中学三年生の時にようやく安いコンポを貯めたお小遣いで購入。とにかくCDで音楽を聴きたかったから嬉しかったけど、お金がなくてCDは一枚しか持っていない。そんな時、近所に住んでいた先輩がいらないからと一枚のCDをくれた。サザンオールスターズの「KAMAKURA」。
僕はそれを文字通り擦り切れるほど聴いた。当時CDは500回聴くと擦り切れて壊れるというとんでもない都市伝説があって、僕はそれを信じ、そのうち聴けなくなるんだろうなって思いながら聴いていた。
大人になるといろいろなものを得て、いろいろなものを捨てて行く。そうやって僕らは生きている。大事なことは、何が大切なのかを捉える力だ。必要でないものを得ようとしたり、必要なものを失ったりしないように。
そんなことを考える時、やはり今でも「KAMAKURA」の中の懐かしい曲達が僕の中に流れる。
by ISTP

