なんとかやっています

なんとかやっています

三角錐の形をした紙パックの牛乳やオレンジジュース。小学生の給食時、瓶の牛乳に替えて時々出されるそれはご褒美的な感じがあったけれど、僕の願望は別のところにあった。
「空になったパックを思い切り踏みつけて音を鳴らしてみたい。」
今になってみると何故かはわからない。
どれくらいその機会を待ち続けたのか。
それも今となっては思い出せない。

小学校2年生の時、チャンスは訪れた。
担任の先生の目が届かない隙があったのだろう、僕の手元には空になった紙パックがいくつも集められていた。空になった三角錐の紙パック。
昼休みの廊下でひとつひとつ思いきり踏みつけていく。
パーン。パーン。パーン。
いつしか多数のギャラリーが出来て、担任の先生がその人並みをかき分けて現れたのはだいぶ後だった。

夕方、割った紙パックの数だけグランドを走らされた。
校庭30周。
校庭には走る僕と見守る担任の先生だけ。
ずいぶんと長い時間だった。
先生は僕が走り終わるのをずっと一人、同じグランドに立って見守っていた。
走り終わると皺くちゃの笑顔で「はい。終わり。」と言われた記憶だけが鮮明に残っている。
先生も汗をかいていて、僕は申し訳ない気持ちになった。

今の僕は実に多くの人との出会いで成り立っているけれど、先生もその一人。
夏が来るたび思い出す恩師。

先生、なんとかやっています。

by ISTP

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